韓国の恋愛リアリティショーの中でも、少し異質な存在感を放っているのが『ドルシングルズ』(原題: 돌싱글즈 )です。
若さやときめきを競う番組ではなく、描かれるのは一度結婚を経験した男女の、現実から始まる恋。
出演者たちは理想よりも先に、「子どもはどうするのか」「経済的にやっていけるのか」「過去をどう受け止め合うのか」といった、避けて通れない問題に向き合わなければいけません。
「ドルシン」とは、韓国語の 돌아온 싱글(戻ってきたシングル) を略した言葉です。
一度結婚を経験し、離婚を経て再び独身になった人を指します。
ここが面白い!見どころポイント
「ドルシン」だからこそ描ける、切実な恋
『ドルシングルズ』が他の恋愛リアリティと大きく違うのは、参加者全員が離婚経験者であるという点です。
単なる恋愛ゲームではなく、「子どもの有無」「離婚に至った理由」「これからの生活を支える経済状況」といった現実の壁に登場人物たちが真正面から向き合います。
軽い駆け引きではなく「もう一度、人生を共にできる相手かどうか」を見極める目線。
その切実さが、この番組に独特の緊張感と深みを与えています。
情報が少しずつ明かされる、静かなスリル
『ドルシングルズ』では、職業、年齢、子どもの有無といった重要な情報が、最初からすべて明かされるわけではありません。
共同生活を続ける中で、段階的に「情報解禁」されていく仕組みになっています。
この過程が、関係性に微妙な変化をもたらします。好意を抱き始めたあとに明かされる事実。
受け止めきれずに揺らぐ気持ち。
この静かだけれど残酷なリアリティこそが、番組の大きな見どころです。
同棲パートが映し出す「結婚後」の現実
番組後半では、マッチングしたカップルが一定期間、実際に「同棲」生活を送ります。
ここで描かれるのはロマンチックなデートではなく、生活習慣のズレ、家事や金銭感覚の違い、親との関係
といった、極めて現実的な問題です。
恋愛感情だけでは乗り越えられない場面も多く、「再婚」という選択の先にある日常が、少しずつ見えてきます。
離婚が珍しくなくなった韓国社会と、この番組の意味
現在の韓国では、「結婚した夫婦の約3組に1組が離婚する」と言われるほど、離婚は珍しいものではなくなっています。
かつては儒教的な価値観が強く、離婚経験者は敬遠されがちでした。
しかし、社会の変化とともに、結婚や家族の形も多様化しています。
『ドルシングルズ』は、そんな変わりつつある韓国社会の価値観を、恋愛という切り口から丁寧に映し出す番組でもあります。
伝説のカップル イ・ダウン✕ユン・ナムギ
『ドルシングルズ シーズン2』で誕生し、韓国中で「奇跡のカップル」と呼ばれたユン・ナムギ&イ・ダウンカップル。
彼らの物語は、単なる恋愛番組の枠を超え、家族のあり方や深い愛について多くの視聴者に感動を与えました。
二人のプロフィールと出会い
イ・ダウンは英語講師。
3歳の娘・リウンを育てるシングルマザーとして番組に参加していました。
ユン・ナムギは広告会社を経営するバツイチ男性。
子どもはいませんでした。
実はナムギは、番組開始当初、「子どもがいない相手」を希望条件として挙げていた人物でもあります。
そのため当初は二人が結ばれる未来はないように見えました。
どん底から始まった、ドラマよりもドラマティックな展開
二人は最初から順調に惹かれ合ってカップルになったわけではありませんでした。
シーズン中盤、ダウンは強い孤独感に包まれます。他の出演者たちが関係を深めていく中で、自分だけが取り残されているように感じていた時期でした。
シングルマザーであること。その現実が、良い出会いを遠ざけているのではないかという不安。
彼女は母親に電話をかけ、「お母さん、私はここでは相手が見つからないかもしれない」「もう帰りたい」と、泣きながら本音を吐露します。
私も「ダウンはこのまま終わってしまうのでは」と思っていました。
しかし、この“どん底”の直後から、物語は静かに動き始めました。
「子どもがいる」という事実が、関係を変えた瞬間
番組中盤の「情報公開」の時間。
ダウンは、自分が3歳の娘を育てるシングルマザーであることを明かします。
ここで多くの恋愛リアリティなら、関係が揺らぐ場面になるでしょう。
実際、ナムギ自身も当初は「子どもがいない相手」を希望していました。
けれど、彼の反応は予想とはまったく違うものでした。
ナムギは葛藤するどころか、
「(条件なんて)関係なくなった」
「会いたいと思っていた人に、たまたま子どもがいただけだと思った」
と語り、ダウンへの想いをさらにはっきりとさせます。
さらに彼は、「子どもがいると聞いて、もっと気にかかるようになった。自分が力になりたいと思った」とも口にしました。
条件が感情を上回るのではなく、感情が条件を書き換えていく。
この潔さと包容力が、多くの視聴者の心を掴んだ名シーンでした。
血のつながりを越える覚悟 ― ナムギの告白
番組後半、もう一つ忘れがたい場面があります。
ナムギは、ダウンの娘・リウンを見つめながら、突然涙を流します。
その理由を問われ、彼は静かに語りました。
「実は、自分も両親の実の子ではなく、養子として育てられた」
この告白は、番組の中でも特に大きな余韻を残しました。
彼は続けて、だからこそ、血のつながりを越えてリウンを愛せるのだと語ります。
この言葉は、「子連れ」という現実を超える覚悟を、言葉ではなく人生そのもので示した瞬間でした。
その後の歩み:恋愛の先にある、リアルな家族へ
番組終了後、二人は「ビジネスカップル」ではなく、本当に人生を共にする道を選びます。
2022年、二人は正式に結婚。番組発の再婚第1号カップルとなりました。
娘のリウンはナムギを「アッパ(パパ)」と呼び、二人は本当の親子になります。
さらに2024年8月には、待望の長男が誕生。現在、彼らは4人家族として幸せに暮らしています。
また、イ・ダウンは、その人気から『ドルシングルズ シーズン7』にMCとして出演するなど、番組の象徴的な存在となっています。
日本ではNetflixでシーズン4が視聴できます。
シーズン4はアメリカ在住の韓国系ドルシン男女が集まったシーズンです。
参加者は、ロサンゼルスやニューヨークなど、全米各地から集まりました。
最初の出会いと共同生活の舞台は、新婚旅行先としても人気のメキシコ・カンクン。韓国の出演者とは一味違ったとても個性的で魅力的なメンバーが多く、「遠距離恋愛(州を跨ぐ移動)」や「元夫の登場」など、アメリカ在住の韓国系ドルシン男女ならではのリアルな壁が描かれています。
シーズン4Netflixで視聴できるので是非一度ご覧ください。
