
このドラマは、人生の折り返し地点で「何者にもなれなかった」と悟ってしまった40歳の女性を主人公にした物語です。
韓国では放送当時、その深い余韻から「文学のようなドラマ」「心の処方箋」と絶賛されました。
とくに40代女性からは、主人公ブジョンの孤独や諦めに自分を重ねる声が多く寄せられたそうです。
LOST 人間失格 作品紹介
- 韓国放送: 2021年(JTBC)
- 演出: ホ・ジノ(映画『八月のクリスマス』『四月の雪』の名匠)
- 脚本: キム・ジヘ(映画『建築学概論』)
- 主演: チョン・ドヨン、リュ・ジュンヨル
- 視聴方法: Amazon Prime Video、U-NEXT など
あらすじ|何者にもなれなかった40歳と、虚無を抱える27歳
主人公のブジョンは、かつて代筆作家としてキャリアを積んでいましたが、ある事件をきっかけに職を失い、流産という深い悲しみを経験します。
現在は誰にも言えない孤独を抱えながら、家事代行の仕事をし、自分自身を「失敗作」だと責め続けています。
一方、27歳の青年ガンジェは、「役割代行(恋人や友人のふりをする仕事)」で日銭を稼ぎながら、「結局はお金がすべてだ」と冷めた目で世の中を見ています。
その内側には、貧困のループから抜け出せない自分への虚無感が渦巻いています。
何の接点もなかった二人が出会い、この物語は静かに動き始めます。
チョン・ドヨン(イ・ブジョン役)
ゴーストライターとして働いていたものの、現在は日雇いの家政婦として暮らす40代の女性。
SNSへの中傷コメントをきっかけに告訴され、仕事も家庭も行き詰まり、「何も成し遂げられなかった」という絶望を抱えています。
チョン・ドヨンは、本作が5年ぶりのドラマ復帰作。
出演を決めた理由について、「脚本を読んで泣いてしまった」と語っています。
ブジョンが感じる孤独や、光の見えない暗闇のような感情に深く共感したとも明かしています。
彼女の演技は、感情を大きく表現するものではありません。
目線や呼吸、沈黙だけで、人生の疲労感や孤独を伝えてきます。
「演技をしている」というより、そこに実際に生きている人を見ているような感覚を覚えました。
化粧っ気のない姿でありながら、洗練された孤独の美しさが際立ち、
このブジョンという役は、彼女でなければ成立しなかったと感じます。
リュ・ジュンヨル(イ・ガンジェ役)
「金が愛だ」と信じ、家族や恋人の役割を代行する仕事で生計を立てる青年。
友人の自殺をきっかけに、自分の空虚な人生と向き合うことになります。
27歳という若さでありながら、どこか人生を達観したような雰囲気をまとうガンジェ。
リュ・ジュンヨルの演技が印象的なのは、セリフよりも沈黙の時間です。
ふとした視線の揺れから、彼が抱えてきた時間の重さが伝わってきて、その静けさがとてもセクシーに映ります。
チョン・ドヨン演じるブジョンと向き合う場面では、年の差を感じさせないほどの深さがあります。
年齢も立場も異なる二人が、無理なく心を通わせていくのは、どちらも「生きることに疲れた地点」に立っているからなのかもしれません。
若さと成熟、希望と諦めという対照的な要素を抱えながらも、言葉にできない孤独の質が、どこか似ています。
主演の二人が共通して語っているのは、このドラマが単なる悲劇ではなく、誰かの慰めになる物語だということです。
『LOST 人間失格』で語り継がれる名シーンと名セリフ
「お父さん、私は何者にもなれなかった。結局、何もできなかった」
ブジョンが父親に泣きながら吐露するこのセリフは、とくにわたしの胸を強く打ちました。
40歳という年齢。
そろそろ夢を持つことを諦めたほうがいいのではないか。
自分の人生は、もうこんなものだと受け入れなければいけないのではないか。
そして、ふと気づけば年老いていた親。
年老いた親の前で、40歳の子どもが口にするこの言葉は胸の奥にツーンと響き、なかなか頭から離れませんでした。
心の中では思っていても、なかなか口に出せない言葉。
それをブジョンが代弁してくれたような、そんな気持ちになったのかもしれません。
語り継がれる官能的なラブシーン
印象的なシーンの一つに、二人のラブシーンがあります。
肌の露出や直接的な描写はほとんどないにもかかわらず、視聴者の間では「これほど官能的なシーンは他にない」と語り継がれています。
二人が共に過ごす場面では過度な音楽が使われず、呼吸音や環境音といった「静寂」が効果的に用いられています。
そっと触れる手、背中に添えられる手。
一つひとつの細やかな動作が、登場人物の心情を雄弁に物語っています。
それは、絶望や孤独をさらけ出し本音を共有することで、二人が深い繋がりを築いているからこそ成立するシーンなのだと思います。
こんな人にぜひ見てほしい
努力しても報われない人生の重み。 何者にもなれなかった後悔と、 どこかに残る申し訳なさ。 それでも、 これからまだ夢を持って生きることは 許されるのだろうか。 そんなことを考えてしまう方におすすめしたいです。
あまりに現実的なシーンが多く、見ていて心が痛くなることもあります。
癒されたいときではなく、自分の人生と向き合う余裕がある夜にぜひ観てほしい一作です。
